2016年04月17日

ジイジの青い地球儀 no.1

地球

ジイジのコレクションはちょっと変っている
マンモスの角の先っちょ
銀色のスーツに身を包んだ宇宙飛行士の人形
パイライトと呼ばれる鉄の結晶
一度も外れたことのない知恵の輪
オートバイの鍵だけ
他にも使い方の判らないガラクタがいっぱい

そんな中でも古ぼけた青い地球儀は
ジイジ一番のお気に入りで
海は深いほど碧く ジャングルは緑 
砂漠はザラザラ 山はボコボコ盛り上がり 
てっぺんは白く雪化粧までされていた

3年前の暑い夏の日
ジイジは煙突の先から
ユラユラと立ちのぼるカゲロウとなって
青い空に消えた
ジイジはアチラの世界を旅するのが
楽しみだと言っていた
空を見上げる僕の胸はキュンとなった
「悲しい」というのとは ちょっと違う
不思議な感じだった

ママによるとジイジはご丁寧に遺言を書いて
僕にこのコレクションを託したそうだ
ジイジのコレクションをもらった日
宇宙飛行士の人形を抱いて眠りについた僕は
夢をみた
  


2016年04月18日

ジイジの青い地球儀 no.2

地球

ウワーッ! アッチッチーッ!
熱い!赤い!どうやら僕は地球の中心
マグマの中を泳いでいるようだった
目の前で金色の結晶が成長をはじめた
パイライトだ!
ピカピカ輝く四角い鉄の結晶は
クルクル回転しながらグングン大きくなり
僕を上へ上へと押し上げた
ドッカーーーン!
火山の火口から空へとびだし
ピューーーン!
青い空をひとっとび
バサバサバサーーーッ!
運よくジャングルの中にころげ落ちると
ドッシン ドッシン ドッシーーーン!
今度はマンモスが現れた
パオーーーンッ!
マンモスは山を揺らすほどの雄たけびをあげ
その長い鼻で僕をクルリとつかむと
グルリングルンと振り回し 
空にほうり投げた
ビュワーーーッ!
風の音が耳を切り裂き
僕はロケットのように天空へと加速していく
シュワーーーッ!

  


2016年04月19日

ジイジの青い地球儀 no.3

地球

突然静かになった 
気付くと シンとした宇宙空間
プカリプカリと漂う僕は 
銀色の宇宙服を着ていた

果てしなく広がる星空
目がくらむほどギラギラ光る太陽
振り向くとそこに地球
海は青く ジャングルは緑
山の頂は白く
輝く雲が ゆっくりと 風に運ばれていた
なんと美しい
涙で目がいっぱいになった

ふと気付くと
もう1人の宇宙飛行士が隣にいる
ヘルメットの中に ニッコリ笑う顔
ジイジだ!
僕はワッと泣きながらジイジに抱きついた
「ジイジありがとう。」
ジイジは笑いながら僕を優しく抱きしめた
「元気で暮らせよ。」
それだけの会話
でも僕には十分だった
  


2016年04月20日

ジイジの青い地球儀 no.4

地球

あれから3年が経つ
あの夢は あれきり見ない
あれはホントに夢だったのだろうか?

流れる雲を眺めながら
そんなことを考えていると
窓から差し込む陽の光が宇宙飛行士を照らした
彼を手に取りプカリと宇宙遊泳させてみる
宇宙服の中になにか入っている
背中のチャックを下げると
一枚のカードが出てきた
「宇宙飛行士受験票」
ジイジの若い頃の写真付きだ
エッ?
目が点になった
ジイジは宇宙飛行士の試験を受けていたのだ

それからの僕は
「将来、何になりたい?」
って聞かれたら
「宇宙飛行士になりたい!」
って答えることにした
また会えるかもしれないからね
ジイジ             

おしまい



「ジイジの青い地球儀」
「ジイジのコレクション」2014年JX「童話の花束」に出品
題名修正・加筆2016年4月
©2016 おおかわはじめ

  


2016年04月24日

ジイジのコレクション no.1



パイライトは 「鉄の結晶」 です。
正確に言うと 「鉄とイオウの化合物の結晶」 
日本名 「黄鉄鉱」
化学式 FeS2

現物を見ると ビックリポン!
なんと角がピシッと切り立ったサイコロ形をしているのです。
キッチリとした形は、加工を施した人工物に見えますが
正真正銘、自然が生み出した奇跡の造形
しかもゴールドに輝くお姿は、ゴージャスそのもの

鉄鉱石ですから、お値段は高くありませんが
気に入ったものと出会うには、運も必要です